件名:◆節税対策メルマガVol.60◆今、なぜ「社宅」の節税が大事なのか? 日付:2015/06/08 差出人:石井税理士事務所
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さて今回は役員社宅についての節税効果を検証します。
「社宅」の節税については何も目新しい節税方法ではありませんが、
実際にどれほど節税効果があるのかを理解していなかったり、
あるいは役員から徴収する家賃をもっと低くできるのに、単純に
家賃の半分を徴収している場合も多く見受けられます。
実際にどれほどの節税効果があるのか、さらになぜ「今」社宅の節税
について、ご紹介するのかをお話ししたいと思います。
まず、役員社宅の節税について基本的な内容を押さえておきましょう。
役員(基本的には従業員についても同じ)の自宅が個人名義の持ち家、
あるいは、個人契約での賃貸借である場合、持ち家であれば、固定資産税、
損害保険料、修繕費等が、賃貸借であれば毎月の家賃、更新料が個人の
負担となります。
これを法人名義の社宅に変更することで、大きな節税効果が得られます。
役員が会社に支払う社宅賃料(月額)は下記の合計額になります。
(1)建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
(2)12円×建物の床面積÷3.3u
(3)敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
これが基本です。
※なお、賃貸物件であっても家主との賃貸借契約書、賃料を支払った
領収書、本人確認書類等があれば、固定資産税評価証明書を取得でき、
社宅賃料の計算はできます。
これについては税理士でも知らない方が多いので、
ご自身で固定資産税評価証明書を取得し、計算してみるといいでしょう。
さて、上記計算式にあてはめて実際に社宅賃料を計算すると、
大抵の場合通常の家賃相場より相当安い金額になります。
過去、実際に計算した例では以下のような金額となりました。
・家賃18万円→社宅賃料6万円
・家賃10万円→社宅賃料3万円
いずれも実際の家賃相場の30%程度です。
なかには、実際の家賃相場の10%以下になる場合もあるようです。
したがって、現状が個人名義の持ち家、個人契約での賃貸借に
なっているならば、所有者、賃借人を法人に変え、家賃総額を
法人に負担させ、計算した低い社宅賃料を役員個人が負担する
ことで節税になるのです。
では、具体的にどれだけ節税効果があるか見てみましょう。
【前提条件】
〇対象法人の当期利益額:500万円
〇社長の役員報酬額:720万円(月額60万円)
【社宅要件】
上記の状況で、下記の社宅制度を導入します。
〇家賃20万円(賃貸借)
〇社宅賃料5万円
【社宅導入前の納税負担】
【1】法人に係る税金等の負担額
(1)法人税等の額:1,217,400円
(2)社会保険料の額:1,027,440円
(3)(1)+(2)=2,244,840円
【2】社長個人に係る税金等の負担額
(1)所得税、住民税の額:748,700円
(2)社会保険料の額:1,027,440円
(3)(1)+(2)=1,776,140円
【3】【1】+【2】=4,020,980円
社宅制度を導入することで、社長の家賃負担が20万円→5万円となり、
15万円社長個人の負担が減るので、役員報酬を月額15万円(年間180万円)
減額します。
これにより、法人については社長の役員報酬減額分については同額の家賃
負担額が発生しますので、利益は増減しません。
一方、役員報酬が減額されるので、社会保険料が減額され、この減額分の
法人利益は増えることとなります。
社長個人については、役員報酬額が減額されるので、所得税、住民税、
社会保険料の負担額は全て減額され、家賃分の負担も20万円→5万円に
減額されたので、手取り額が増えることになります。
【社宅導入後の納税負担】
【1】法人に係る税金等の負担額
(1)法人税等の額:1,282,300円
(2)社会保険料の額:766,224円
(3)(1)+(2)=2,048,524円
【2】社長個人に係る税金等の負担額
(1)所得税、住民税の額:439,900円
(2)社会保険料の額:766,224円
(3)(1)+(2)=1,206,124円
【3】【1】+【2】=3,254,648円
この結果、社宅導入前と、社宅導入後の税金、社会保険料の負担は
以下のとおりとなります。
法人負担分:1,217,400円→1,282,300円(+64,900円増額)
個人負担分:1,776,140円→1,206,124円(▲570,016円減額)
役員報酬額を減額することで、社会保険料の会社負担分は減額される
ので、その分利益が増加し、納税負担は増えます。
しかし、個人負担分の節税額がはるかに法人納税負担額を上回る
こととなり、役員報酬額を15万円減らしても個人の手取り額は実質
月5万円程度増えることとなります。
いかがでしょうか?
単に家賃の負担を法人に負担させるのではなく、同時に個人の給与
を下げることで相乗効果が発揮され、大きな節税へと繋がるのです。
さらに持ち家であれば、建物の減価償却費や修繕費も法人の経費
として計上することが可能となります。
法人税の税率が減額傾向にある一方で、個人の税率、社会保険負担料率
は増額傾向にあります。
この時流に乗るならば、「いかに個人に係る税負担を法人に転嫁させ、
個人所得(給与)を減らしていく」かが最もお金が残る節税方法という
ことになり、社宅の節税方法はその最たるものと言えます。
しかし、これについては「税制」にのっとって確実に実行しなければ
あとで(=税務調査で)大きなしっぺ返しを食らうこともありますので、
専門家の指導のもと、実行してみてくださいね。
余談ですが、役員社宅については「豪華社宅」については時価相当額
を社宅賃料とすることとされていますが、「豪華社宅」と認定されること
は、まずないようです。
先日、税務職員と話す機会があったので、「豪華社宅」について質問し
たところ、「役員個人の嗜好性の判定が求められるので、正直言って
判断しにくい問題です。今まで「豪華社宅」の件で署内で問題視された
ことは聞いたことがないですね。」と言っていました。
(参考)国税庁HP「役員に社宅などを貸したとき」 https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2600.htm
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