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----- 石井税理士事務所 -----


件名:◆「あらゆる節税対策を紹介する」メルマガ◆社会保険料節減スキームの問題点
日付:2014/10/20
差出人:石井税理士事務所 

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最近、社会保険に関する相談をよく受けます。

これについては8月11日のメルマガで下記のコメントを発信しました。


(ここから)

社会保険については、社会保険労務士の方が専門ではあるのですが、

私の顧問先も含め、一般の方は税理士と社会保険労務士の専門範囲が

ごっちゃになっている方も多く、実際、社会保険料の削減については、

私もよくご相談を受けます。


その背景には社会保険未加入事業所への強制加入の締め付けがあります。

本来、法人であれば社会保険は基本的に強制適用であり加入しなければ

ならないのですが、重い保険料負担を避けるために、加入していない法人

も多いのが現状です。

先日、年金機構が国税庁のデータを使用して、社会保険未加入事業所の

照合及び強制加入を数年の間に実現させる、という記事がありました。


(下記ブログをご参考ください。)

http://ameblo.jp/zuisan1964/entry-11888578589.html


(ここまで)


最近年金事務所から、指定期日を提示し加入を促す通知書が一斉に

送られてきており、かなり強硬的な手段で社会保険の一斉加入に乗

り出した感じです。


8月11日のメルマガでは個人事業を活用した社会保険料の節減方法

をお伝えしましたが、今回は賞与を支給する社会保険料節減スキーム

とその問題点について検証します。


インターネット上で例えば「事前確定届出給与 社会保険料節減」と

検索すると、主に社会保険労務士さんのサイトがアップされ、以下の

ような内容の話しが書かれています。


「A社は社長に対して、現在月々100万円・年額1,200万円の報酬を支

給し賞与は一切支給していません。

税務上の【定期同額給与】として支給している状況です。

しかし、この年額1,200万円の支給形態を変更し、賞与として支払う

方法を取ることで社会保険料を節減させることができます。

具体的には社長に対する月々の報酬を20万円、年額240万円に減額し

ます。

そして減額した960万円を「賞与」として支給します。

その賞与については【事前確定届出給与】として税務署に届出を行い

ます。

年収自体はどちらも総額1,200万円ですが、このように支給形態を変更

することで、100万円以上社会保険料の負担を減らすことができます。

これは保険料率を乗じる賞与額には上限額があり、賞与1回につき健康

保険料については540万円・厚生年金保険料については150万円が上限に

なるため、これを超えた部分の賞与額に対する社会保険料はカットされ

るためなのです。」



さて、ここで社会保険料の節減については問題はないかもしれませんが、

税務上の問題はないのかという疑問が生じるところですが、その前に

【定期同額給与】と【事前確定届出給与】について説明します。



【定期同額給与とは】

 定期同額給与とは、法人が役員に月々定額を支給する報酬のことで、

 原則として事業年度開始の日から3月を経過する日までの株主総会等

 の決議により改定することができます。


【事前確定届出給与とは】

 事前確定届出給与とは、法人が役員に対して支給する賞与で、あらか

 じめ所轄税務署長に届出をしたものをいいます。

 その届出は,株主総会等で支給の決議をした日から1ヶ月以内、又は

 職務執行を開始した日から1ヶ月以内に届出を行わなければなりません。



では本題に移ります。



まず、【定期同額給与】についての改定は、報酬を増額することも減額

することも可能で、改定することに特に理由は要しません。

社会保険上はともあれ、税務上からみる限り、健康保険料や厚生年金保

険料等の社会保険料の負担を軽減するための改定であっても差し支えあ

りません。


上記事例のA社が、このような改定の手続をすれば、社長に対する月額

報酬100万円を20万円に減額することは認められ、改定後も定期同額給与

に該当します。


次に【事前確定届出給与】ですが、上記の事例のA社が、適法に届出の

手続をとれば、社長に対する960万円の賞与は事前確定届出給与に該当

します。

これについても問題はありません。


以上のように、定期同額給与の改定と事前確定届出給与の届出を所定の

期日までに適法に行えば、その報酬と賞与はそれぞれ定期同額給与と事

前確定届出給与に該当するといえます。


問題は定期同額給与と事前確定届出給与に該当するとしても、賞与であ

る事前確定届出給与については、定期同額給与の支給状況と比較すると

あまりにもバランスを欠き、過大給与に該当するのではないか、という

疑義が生じる点にあります。


そして、これについては法令の解釈によって意見が分かれるところです。


以下、ちょっと長くて難しくくなりますがついてきてくださいね。


まず、過大給与かどうかの判定単位は、役員に支給したその事業年度中

の【給与の総額】を基準に判定するのか、それとも【定期同額給与、事

前確定届出給与ごと】に判定するかどうかによります。

そして、過大給与かどうかは、各事業年度において役員に対して支給し

た給与の額が、その役員の職務に対する対価として相当であるかどうか

を基準に判定します。



法令の規定を形式的にみれば、単に「各事業年度において役員に対して

支給した給与の額が」というだけで、定期同額給与と事前確定届出給与

とを区分して過大かどうかの判定を行うことにはなっていません。

その限りでは、定期同額給与と事前確定届出給与との内訳は問題ではな

く、その事業年度に支給した給与の総額こそが問題であるということに

なります。


これは,「会社法」では報酬と賞与は区分する必要がなく、職務執行の対

価として支給額を定めることができるとする趣旨に沿うものといえます。


そうすると、上記の事例では、年額1,200万円の給与総額が過大であるか

どうかを判定すればよく、賞与960万円のみの過大性は問題にならないこ

とになります。



しかし一方で、法令上各事業年度におけるその役員に対して支給した給与

の総額を基準に過大かどうかを判定する旨の明文の規定もありません。

むしろ「役員に対して支給した給与の額が」と規定されている以上、賞与

(事前確定届出給与)も給与の一つですから、賞与の額だけで過大かどう

かを判定するという考え方が生じることになります。


ここで法令では「当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその

使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人

でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照ら

し、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超

える場合におけるその超える部分の金額」は過大役員報酬と規定しています。


したがって「その内国法人の該役員の職務の内容」、「その内国法人の収益

及び使用人に対する給与の支給の状況」、「その内国法人と同種の事業を営

む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況」を

踏まえると、上記の事例の社長に支給する各事業年度中の給与総額は変わら

ないとしても、賞与(事前確定届出給与)については過大給与に該当し、

税務上否認される可能性があることは否定できません。


実際の否認事例は今のところ聞いたことがありませんが、上記の法令を

根拠に否認リスクはあると考えられますので、諸手をあげて「ぜひ実行

しましょう」と言うことはできません。


否定的な言い方をすれば、ここまで法解釈をしたうえで、社労士さんが

提案しているのかと言えば、まずそれはないでしょう。


いかがでしょうか?


今後社会保険加入の締め付けが一層強まれば、上記のスキームを実行する

会社も増えてくるでしょう。

もし実行するのであれば、税務上の否認リスクはあることを認識しておく

ことと、設定した事前確定届出給与額(上記の事例であれば960万円の賞与)

が同業類似法人の役員賞与の支給状況などに照らし、その金額に妥当性があ

り、合理性があることを裏付けるための根拠資料を用意しておくことが必要

でしょう。


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