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件名:◆節税対策メルマガVol.141◆貸倒損失はいつ計上できるのか?
日付:2021/06/21
差出人:石井税理士事務所 

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   『「あらゆる節税対策を紹介する」メルマガ』Vol.141

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さて今回は貸倒損失の計上についてのお話しです。

新型コロナウィルスの影響で取引先が倒産・廃業ししてしまった。

あるいは緊急融資の返済が開始され、資金繰りに窮してしまって

売掛金の入金が滞っている。


このような状況が今後は確実に増えていくでしょう。

となれば場合によっては回収を断念せざるを得ない状況も生じます。

しかし税務上「貸倒損失」の計上は厳格に規定されていて、自己の

勝手な判断で計上できるものでもありません。(下記参照)


タックスアンサー「貸倒損失として処理できる場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5320.htm


取引先が破綻し、法的措置をとった場合や債権者集会を開いた場合

などは貸倒損失が計上できる時期が特定されるので、その計上時期を

間違えなければ税務否認を受けることも少ないはずです。


しかし中小零細企業の場合、上記のような手続きをとる方は少なく、

債権者側から回収見込みがない(=貸倒損失)判断をすることが

多いと思います。

しかしながら貸倒損失の計上時期について税務調査官と揉めることが

あります。

回収見込みがない判断は自己判断になりますので、計上時期は操作

できてしまいます。

多額に利益が計上された事業年度に貸倒損失すれば、利益操作が

できてしまうわけで、税務調査官としても当然調査したくなるわけです。


さて、回収見込みがない判断をした場合、債務免除通知書等を

内容証明郵便で発送することが多いです。

内容証明郵便は法的な効力があるものではありませんが、

郵便局が文書内容・発送日・相手が受け取った日などを証明する

制度なので貸倒損失の計上時期を立証する根拠資料となります。

税務調査の場合、たいていの立証責任は税務署側にありますが、

貸倒損失については納税義務者側に立証責任がありますので、

証拠資料をしっかりとそろえておくことがとても重要です。


内容証明郵便については国税当局も「

債務免除の事実は書面により明らかにし、内容証明郵便等により

交付することが望ましい。」としています。

質疑応答「第三者に対して債務免除を行った場合の貸倒れ」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/16/03.htm


さてここで内容証明郵便を発送すればそれでOKというわけでは

ありません。

相手側が夜逃げして不在だったり、受け取りを拒否したりして、

内容証明郵便が相手方に届かないことはよくあります。

このような場合、その効力は有効なのかという疑義が生じます。

まず債務免除の有効性については民法で以下のように規定されています。


民法第519条

「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、

その債権は消滅する。」


つまり債権者が一方的に行えば、その債権(債務)は消滅します。

なのでとりあえず内容証明郵便を発送すれば債務免除の意思表示は

有効になるわけです。


しかし実際に税務調査で貸倒計上時期がいつなのか?となると、

別問題です。

その効力の発生時期について問題視されることになります。

これについてはやはり民法で以下のように規定されています。


民法第97条

「隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に【到達】した時

からその効力を生ずる。」


「隔地者」とは対面者でないことですので、郵送でやり取りを

する場合を想定しています。

通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる、ということは

相手方が不在だったり、受け取り拒否をしていた場合は、通知が相手方に

到達してないので、その効力は生じていない=貸倒損失の計上ができない、

ということになってしまうのでしょうか?


過去の判例では相手方が不在だったり、受け取り拒否した場合でも

認められるケースも多いのですが、ケースバイケースです。

そこで実務上は内容証明郵便と同一内容の特定記録郵便を合わせて

送ることで【到達】要件を確保させます。

特定記録郵便は相手の意思にかかわらず、不在であっても、

ポストに投函してもらえますので民法第97条の【到達】があったと

評価され、この時点で貸倒損失が計上できるわけです。

一方で、その文書の内容については特定記録郵便では証明でき

ないため、内容証明の文末に「なお、念のため同内容の文書を

特定記録郵便でも発送したことを申し添えます。」と記載し、

郵便の封筒に日付を記載してコピーを保存しておきます。


民法では「公示による意思表示」という制度が規定されていて

この制度を証拠として利用することもできます。


民法第98条

「意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在

を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。」


簡単に言うと裁判所の掲示場に掲示した上で、官報か役所の掲示板に

掲示します。2週間経過すると相手方に到達したものとみなされます。

具体的には裁判所に「意思表示の公示送達の申立て」を行います。

費用は2,000円程度でできますので、場合によっては検討すべきです。


 いかがでしょうか?


貸倒損失については国税当局が詳細な要件を規定している一方で、

計上時期については明確に規定されておらず、個々の事案に応じて

判断されることになります。

当然ながら税を徴収したい税務署と、余計な税金を納めたくない

納税者では最初から判断基準に温度差があり、揉めやすいわけです。

また立証責任が納税者側にあることからも、できる限りの証拠資料は

そろえておくべきなのです。
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